大切な養育費について

平成24年4月から離婚届の欄外に養育費に関する項目が追加されました。
時代とともにそれだけ養育費に関するニーズは高まり、『養育費が大切なもの』だという認識も広がっています。

このページでは、その大切な養育費について、詳しくご説明しています。

目次



養育費とは

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お子さまがいらっしゃるご夫妻が離婚をされる場合、一番多くの時間を割いて話し合われるのがこの「養育費」についてだと思います。

では養育費とはそもそもどのようなものなのでしょうか。



養育費とは、未成熟(経済的・社会的に自立していない)の子どもが生活するために必要な費用のこととされています。
生活するために必要な費用ですから、食費や医療費、服や靴といった衣服はもちろん教育費なども含みます。つまり子どもを育てていく上での一切の費用ということになります。

この養育費を、「離婚後に親権者とならない親(子どもと離れて暮らすことになる親)」は当然に負担する義務があります。離婚をしても子どもとの法律上の親子関係は変わりなく、子どもに対する扶養義務を負っているからです。
また、子ども自身も親に対して養育費を請求することができます。


養育費の義務の程度

では、子どもと離れて暮らすことになる親は、その養育費をどの程度負担すればよいのでしょう。

少し専門的な言葉になりますが、養育費の義務の程度は、生活扶助義務(親が経済的に余裕のある場合にだけ、子どもに最低限生活できるレベルでの援助をすればよい義務)ではなく、生活保持義務(親が経済的に余裕がなかったとしても、自身と同程度の生活をさせる扶養義務)とされています。

これは、例えば離婚後に子どもと離れて暮らすことになった父親が高級マンションに住み、他方で子どもは古いアパートに住むというようなことがあってはならない、ということです。しかし逆に父親の勤める会社の業績が悪化して給料が下がったりした場合には、最低限自分と同じような生活水準を保障すればよく、高額な養育費を借金をしてでも払うような義務ではない、ということにもなります。


養育費を取り決める時期

次に、養育費は「いつまで」に取り決めておく必要があるでしょうか。

相談者さまの中には、離婚の際に養育費の取り決めをしていなかったが、「離婚後に養育費を請求できるものなのか」と不安そうに質問される方もいらっしゃいます。
しかし、養育費はいつまでに取り決めなくてはならないという決まりはありません。子が成熟するまでの間であれば、いつまでも請求することも出来ます。

ですから当然離婚後に取り決めることも可能です。ケースによっては離婚を先行させ、離婚後に改めて養育費を取り決めるということもあり得ます。

しかし、離婚後に適切な話し合いが出来る保証はありませんし、養育費は『離婚後の生活の基盤』となりますから、離婚をする時までにしっかりと決めておくことが大切です。


養育費が決まらない場合

養育費については、金額はもちろん、いつまで(子どもが何歳になるまで)支払うのか、子にかかる費用のうちどの部分を養育費に含めるか、など取り決めることが多くあります。
そこで残念ながら当事者間で養育費の話し合いがつかない場合、第三者の関与のもと養育費を定めていくことになります。

具体的には家庭裁判所にて以下のような手続きを経ます。

  • 家庭裁判所の調停
    離婚前であれば「離婚調停」の中で、調停委員を交えて解決を図ります。
  • 家庭裁判所の審判
    調停でも協議がまとまらない場合、家庭裁判所が審判で養育費の額等を決めます。
  • 家庭裁判所の裁判
    最終的には離婚を求める訴訟で、離婚と同時に養育費について、判決で決めてもらうこともできます。


養育費の金額

ここからは、養育費の中身について触れていきたいと思います。

養育費については、その「金額」が間違いなく最も重要で、かつ多くの時間を割いて話し合われる項目になります。
月々いくらの養育費をもらえるか(支払うか)は、離婚後のご夫妻にとってはとても大きな問題だからです。

養育費の相場

「養育費は子ども1人につき金3万円」。このようなことを聞かれたことはないでしょうか。
実際当事務所の相談者さまの中に、このようなことを前提に、自身の養育費が高い or 安いと心配される方もいらっしゃいます。
しかし、これはまったく根拠のない噂レベルの話しで、養育費の金額というものは、この後に述べる「算定表」やご夫妻の離婚後の収入など様々な状況によって決められます。

養育費算定表

平成15年に「養育費算定表」というものが東京・大阪の各裁判官らによって作成され、以来多くのケースでこの算定表に基づいて養育費が決められています。

例:1
夫(養育費義務者)の年収300万円、妻(養育費権利者)の年収100万円の場合
① 中学生までのお子様1人で2~4万円、2人で4~6万円
② 高校生以上のお子様1人で4~6万円、2人で6~8万円
例:2
夫(養育費義務者)の年収500万円、妻(養育費権利者)の年収100万円の場合
① 中学生までのお子様1人で4~6万円、2人で6~8万円
② 高校生以上のお子様1人で6~8万円、2人で8~10万円
※金額はあくまで目安です。

算定表では、養育費義務者(養育費を支払う側)と養育費権利者(養育費を受取る側)の年収の差と、子どもの年齢及びその数によって養育費の額が概ね決められます。

「養育費算定表」を下記からダウロード出来ますので、ご入用の方はご自由にダウンロードしてください。

「養育費算定表」の問題

平成15年に「養育費算定表」が世に出て以来、離婚実務ではこの算定表に従い養育費を算定しているのが現状です。
しかし、その額の根拠には疑問点も多く、また各方面から問題点が指摘されています。

平成24年3月には日弁連から「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表に対する意見書」というものが出されました。
大筋の内容としては、算定表で出される養育費の額は、子育ての実態にそぐわないばかりか、養育費義務者(養育費を支払う側)と養育費権利者(養育費をもらう側)との経済格差を助長しているとの指摘が為されています。


「養育費算定表」は便利なツールですが、一方で柔軟性がなく、各家庭の細かな事情に十分対応できているかについては疑問が残ります。
ですから、あくまで算定表は目安と考え、お子様にとって本当に必要な金額を、離婚後のご夫妻の状況やご事情に照らして「適正」な金額を探っていくことが重要です。

養育費の金額の定め方

では、具体的に養育費の金額をどのように取り決めていけばよいのでしょうか。

養育費は「子どものために」支払われるお金である一方、現実問題としては、離婚する相手方に対して支払われます。この点が養育費の問題を複雑にしています。
離婚時の相手方への複雑な感情が、特に「支払う側」にとっては『出来るだけ払いたくない』というバイアスをかけてしまいます。
また、他方で「もらう側」も『出来るだけ多く支払ってほしい』という感情のもと「支払う側」の事情を一切考えずに金額を要求する場合もあります。
しかし、養育費の支払期間は、一般的にとても長期なものになります。無理な金額を設定しても、支払われ続けることは不可能でしょう。それでは元も子もありません。

大切なのは、「子どものために」という基本原則に立ち返り、本当にその子、その家庭にとって必要な金額であり、そして継続的に支払い可能な金額を設定することなのです。

養育費の期間

養育費をいつまで支払うか、支払ってもらうかはとても大きな問題です。
一方は出来るだけ長く支払いを望むでしょうし、一方は出来るだけ早くその支払を終えたいと考えるかもしれません。

しかし実は、養育費の支払い期間については明確な基準がありません。いつの時点で子どもが「自立した」と考えるかは人それぞれだからです。

ただ一般的には子どもが満20歳になるまでとするケースが多いようです。
また、当事者の合意で高校卒業までとしたり、大学卒業までとしたりすることも可能です。


もう一つの考え方として、養育費を支払う親が大学に進学しているかどうかも実務ではよく判断材料となります。たとえば自身は親の援助によって大学まで出ておきながら、子どもに対しては養育費を20歳までしか支払わないというのは少しおかしな話しです。
そこで最終学歴を参考に養育費の支払期間を定めることもあります。


養育費の支払方法

養育費の支払方法についても、特段決まりはありません。
一般的には口座振り込みによる方法が多いとは思いますが、手渡しであっても構いません。
ただ後々のトラブルを回避する上でも支払った形跡が残る方法で支払いをするほうが好ましいでしょう。

また、口座振り込みによる場合は、各金融機関が提供する自動送金サービスや自動振込サービスを利用するのも賢い方法です。
養育費の支払期間は長期間に及びます。その中で支払いを忘れたり、期日までに間に合わなかったりすることも出てきてしまいますが、受け取る側にとってはその1回が大きなストレスになります。
そこで自動振込サービス等を利用すれば払い忘れもないですし、継続的に支払いの有無を確認するという手間もなくなります。


養育費についての大切な考え方

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当事務所では、この養育費については「いかに多く取るか」という短期的な利益ではなく、「いかに継続して、決めた額を支払ってもらえるか」という中長期的な利益を目指すべきだと考えています。

が、これが本当に難しいことなのです。



継続的で安定した養育費の支払いのためには、離婚後のお互いの収支をある程度計算し、子どもの養育にかかる費用はいくらかをしっかり把握しなければなりません。その上で上記の算定表も用いながら、お互いが納得できる金額を探る必要があります。

一番してはいけないのが、懲罰的な意味合いや、早く離婚したいから(または求められているから)という理由で、本心での納得のないまま高額な養育費を定めることです。
長い長い支払い期間、そのような金額(納得出来ていない金額)が守られる可能性は高くありません。

「養育費」は子どもの親権者となった親にとって離婚後の生活の基礎となるものです。確かに養育費が高いに越したことはありませんが、だからといって不安定では何の意味もありません。

子どものいる夫妻にとって養育費の取り決めは、名実ともに離婚協議の最重要課題です。利害関係も多く様々な事情が絡み合いますが、大切なお子さまのため、冷静で本質的な話し合いが期待されます。


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